報告 『小笠原の希少動物を守る』~私たちにできる小笠原の野生生物保護~

アカガシラカラスバト、オガサワラオオコウモリなど小笠原の希少動物を守るために、NPO法人どうぶつたちの病院は、どうぶつ医療の提供を行なうとともに、関東・東京地区獣医師会連合会主催のシンポジウムに開催協力し、350名の方々にご参加いただきました。

今後も島からの要望に応え、小笠原の「野生を守る仕事」を進めてゆきます。シンポジウムにお越しいただいた350名のみなさま、ありがとうございました。


お越しいただけなかったみなさまへ、簡単ですが、プログラムに沿って報告をさせていただきます。

【シンポジウム報告】
シンポジウム 『小笠原の希少動物を守る』
~私たちにできる小笠原の野生生物保護~
2007年9月2日(日)15時から17時10分
タワーホール船堀5階大ホール
主催:関東・東京地区獣医師会連合会
企画:(社)東京都獣医師会
協力:NPO法人どうぶつたちの病院

挨拶   手塚 泰文  
        関東・東京地区獣医師会連合会  東京都獣医師会会長

基調講演「(社)東京都獣医師会における希少野生動物保護の取り組み」
   羽山 伸一  (社)東京都獣医師会野生動物対策委員長
小笠原の希少野生動物を捕食するおそれのある飼い主のいないネコを環境省・林野庁・東京都が緊急捕獲するにあたって協力要請を受けた(社)東京都獣医師会は、会員病院でネコたちを引き受け、人に慣らし、新しい飼い主に譲渡する活動を行なっています。この島ネコたちを受け入れることで、病院スタッフたちは、「小笠原の希少動物を守っている」という気持ちから「飼えて楽しい」「かわいい」・・・などに変化しました。どうぶつ医療に携わる人間の原点がここにあるようです。

現地報告 「小笠原の危機」
   鈴木 創 NPO法人小笠原自然文化研究所事務局長
小笠原の希少動物を守るために外来種であるネコを捕獲。東京の動物病院で、「猛獣」から「ただのネコ」になり、病院スタッフにねこかわいがりされる様子を知るにつけ、小笠原におけるネコ問題の解決は、トリを守るだけではなく、ネコを守ることにもなるとの認識が芽生えました。同時に、ネコの捕獲、一時飼養、搬出などに続々と関わる個人、団体が現れ、小笠原の野生を守る取り組みは、島の中でも拡がりを見せています。

先進地報告 「やんばるの危機」
   長嶺 隆 NPO法人どうぶつたちの病院事務局長 
ヤンバルクイナの絶滅を回避するために、ヤンバルクイナの生存を脅かす飼い主のいないネコの保護収容、どうぶつ病院のないやんばる地域での飼いネコに対する不妊化手術の実施、捨てネコ防止の活動、交通事故などで傷ついたヤンバルクイナの治療、野生に帰せないヤンバルクイナの飼育・繁殖、ネコやマングースなど捕食者がいないシェルターの建設や運営・・・・。沖縄の中だけでなく、全国のさまざまな人たちとの協働で、やんばるの野生を守る動きが地域に根付いてきています。どうぶつ医療を通じてこの活動にかかわることで、獣医師の可能性を感じ、「獣医師でよかった」との思いを強くしています。

パネル討論 
コーディネータ:林良博 東京大学教授
パネリスト  
 鈴木創 (NPO法人小笠原自然文化研究所)
 中山隆治(環境省小笠原自然保護官事務所首席自然保護官)
 長嶺隆 (NPO法人どうぶつたちの病院)
 湯村義夫(小笠原村企画政策室長)
 羽山伸一(東京都獣医師会)

小笠原の自然再生を実現するために、小さくてもよいから実績をひとつずつ積み上げよう。そのひとつとして、ネコ問題を解決しよう。この2年の間に「飼い主のいないネコ」をゼロにしようという方向が見えました。

NPO法人どうぶつたちの病院は(社)東京都獣医師会とともに、小笠原のネコ問題を解決するための輪に加わります。たくさんの知恵、さまざまな技が必要です。力を貸してください。